我が家の年末の行事
年末の行事といえばお歳暮に年賀状の準備、クリスマスに大掃除におせち作り。
ひとそれぞれ様々なイベントを思い浮かべると思うのだが、どれもみな少し気ぜわしい。
なぜ年の瀬が迫ると心がざわざわと浮足立ってしまうのだろう。
そんな世間が少し焦る感じが、私は好きだ。
誰しもが何故かテキパキと用事を片付けようとしている姿に、私も触発されてぱたぱたするのが好きなのだ。
ところで我が家の年末には恒例の行事がある。
日帰り人間ドックである。
もともと家人が定期的に受けていたのだが、いつしか私を誘うようになり、バリウムを嫌がる私を毎年この時期連れ出すのだ。
バリウムを拒否して胃カメラを飲む事にする年もある。
この時の面白エピソードはまたいずれ書く事もあるかな?と思うので今日は書かない。
駅から検診センターに行く道すがら、魅力的なお店がいくつかあるのだが、私たちが決まって受ける人間ドックのコースには検診後の食事がセットされており、お腹いっぱいで病院を後にすることになる。
つまり、行きも帰りも何も食べられないのだ。
だが今年は違う
そんな私の気持ちを察したのか、今年家人が選んだ検診は人間ドックではなく生活習慣病予防検診。
これなら検診後に買い食いができる!
検診当日。私たちはどのお店にしようかとウキウキしながらお店を物色しつつ、検診センターへ向かったのだった。
我が家の行事と書いたが、猫は留守番である、、、すまぬ。
どうして・・・
検診後に選んだお店は
検診後には菓子パンが支給されるのだが、食べるわけにはいかない。
私たちは意気揚々と病院を後にし、目的の店に向かった
目論み通り、腹ペコキング状態で羽二重団子屋さんにたどり着いた
私はいっさいの迷いなく暖簾をくぐった(暖簾の位置は私の頭よりだいぶ高かった)
「ごめんよっ!だんごを喰いに寄らしてもらったよぅ!」
威勢よく店のお嬢さん(二回りくらいご年配の店員さんです)に心の中で声をかけつつ店内に足を踏み入れた。
初めて入る店である。
羽二重団子屋に踏み込んだからには
私は素早く店内に踏み込むと同時に店内の動線、什器の位置、避難経路、消火器、店員の数を掌握した。
家人「踏み込むって、家宅捜査じゃないんだから。普通に案内された席に座って注文しなさい」
なぜか家人に窘められた。
私はいつだってお利口にしているというのに、、、
静かにお品書きを順番に目を通す。
全ての品目にじっくり目を通した後に、私はおもむろに前日から決めてあった品を注文した。
「羽二重団子(煎茶セット)をください」
羽二重団子セットは串団子2本(餡団子(さらし餡)、焼き団子(生醤油))と煎茶で構成されている。間違えようのないド定番のメニューである。
家人もきっとこれを注文するに違いない
家人「漱石セットをください」
漱石セット!?私は軽く眩暈を覚えた。
漱石セットは先ほどお品書きで見た限りでは焼き団子(生醤油)と最中だったはず。
団子屋さんで最中を頼むことに後悔はないのか家人よ!
私は心のつぶやきを声にだして家人を軽くたしなめた。
羽二重団子セットと漱石セット
ほどなくお店のお嬢さんがお盆に乗せた団子を供してくれた。
猫の形をした最中がちょっと可愛いとは思うが、中身は餡子。団子ではない。
そもそも家人は羽二重団子の名前の由来を知らないのではないか?
羽二重団子とは
文政二年、小店の初代庄五郎が、ここ音無川のほとり芋坂の現在地に「藤の木茶屋」を開業し、街道往来の人々に団子を供しました。この団子が、きめ細かく羽二重のようだと賞され、それがそのまま菓名となった。
「つまり、羽二重団子は団子が主役。餡子ではないのですよ、家人よ」
と私は優しく家人に教えてあげたのだった。
家人の最中(もなか)
家人は一瞬、しまったという顔をしたが
家人「でもこの最中、猫だから・・・」
負け惜しみである。
家人は悔しいのか、最中は後回しにして焼き団子(生醤油)を手にした。私もそうしよう。
「美味い!」「美味しい」
きめが細かく、さくっと歯切れの良い団子。
焦げた生醤油が香ばしく、きりっとしょっぱい。
みたらし団子も良いけれど、生醤油だけの焼き団子もいいなあ。
お腹が空いているので醤油は特に良い。
あっという間に一本食べてしまったのだった。
煎茶を飲み、口の中をリセット。
次はいよいよ本命の餡団子だ。
羽二重団子の餡はさらし餡を使っている。
さらし餡とは
こし餡を水にさらして沈殿させたあと、上澄みを取り除き、再び水を足して沈殿させを繰り返し、充分あくを取ったあとに沈殿した餡を絞るというなかなかに手間のかかる餡である。
こし餡よりもさらにきめ細かい餡というわけだ。これできめの細かい羽二重団子を包むのだ。
美味しいに決まっている。
最中を選んだ家人を少し気の毒に思った
「ひとつ食べませんか?」と、餡団子を差し出す
家人「いや、最中食べるから」
なかなかに強情である。
動揺をしているのか家人は最中をお皿の上で取り落として、最中の皮がずれた。
ずれたところからぱかっと皮を外す家人
家人「あっ!」
わたしも「あっ」
最中の中はただのさらし餡ではなく、餡団子が収納されていたのだった。
家人「餡団子も美味しいものだねー」
と最中の皮をパリパリさせながら頬張っている。
香ばしい最中の皮がプラスされている分、私の餡団子より美味しそうである。
複雑な気持ちのまま、お店をあとにした私なのだった。
来年また帰ってくるぞー、、、たぶん
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